生産者紹介 | 富谷 亜喜博さん

Akihiro Tomiya

農事組合法人
さんぶ野菜ネットワーク
代表理事富谷 亜喜博さん(取材:2017 年9月)

千葉県山武市は、ワタミファームが農業に進出した2002年に、始めて農場を開設した地です。
ワタミグループが山武で農場を開くきっかけをくださった方と、富谷さんは 個人的なお知り合いだったそうで、ワタミとのお付き合いも15年も継続していただいています。

富谷 亜喜博さん
心を奪われる美しいにんじん畑

心を奪われる美しいにんじん畑!

まっすぐに整列した人参の葉は、とても綺麗な黄緑色で、ちょっと遠目にはフワフワしたカーペットが広がっているような感じでした。しかし近寄ってみると、茎と葉のひとつひとつが、ピンと張っていて、力がみなぎっています。丁寧に除草されている畑の土の色もまた、綺麗な焦げ茶色をしていました。

ワタミへ有機野菜を提供するために、契約は野菜を納品する半年前。

さんぶ野菜ネットワークさんからは、現在、主に人参や大根をワタミへ提供していただいています。有機野菜を流通させることで大変なことは何ですか?と率直にお伺いすると、「契約をすること(守ること)」とおっしゃっていました。特にワタミグループとの取引は、「(お店で提供する)メニュー」という商品企画があって、その素材として収めるからには、「野菜が約束通りでき ませんでした」などということができません。慣行農業とちがい、野菜の病気が見つかっても、農薬で病気を食い止めることはできません。およそ半年前に契約をして、約束の時期に、決まった分量の有機野菜を収めるために、 労力や手間をかけていただいています。

富谷 亜喜博さん

有機農業を始めたきっかけ

農業37年のキャリアをもつベテランの富谷さんは、就農して8年間は慣行農業をされていました。手間がかかる有 機農業を始めたきっかけは、何だったのでしょうか。慣行農業をされていた当時「土壌消毒剤」の使用については、栽培指針にもあるため、何も疑問をもたれなかったそうです。しかし、石油製品である農薬は猛毒でもあります。ある時、消毒剤の容器の蓋を開けた際に風が吹き、消毒剤のガスがご自身の目に入り、15分以上涙がとまらないという経験をされたそうです。
そして転機は、今から31年前。有機農業の勉強会に参加し、当時でも有機農業が盛んだった三里塚(千葉県成田市) を見学した際に、多品種で元気に育っている野菜を見て驚いたそうです。その年は台風や秋雨の影響で、山武の農家では、何度も農薬散布をしても人参の病気に効果がなく、そんな時でも三里塚の有機野菜が元気だったことに衝撃を受けたそうです。
「よし!やってみよう!」と、富谷さんも含め山武で20軒ほどの農家で、300坪からスタートしました。そして、有機農業をはじめてから10年目に、ついに慣行農業を全面廃止されました。

有機農業の大変な点、大切なこと

「虫との戦い」

苗にちょっとでも虫がついていたら、植え付け後の圃場で、虫の被害は拡大してしまう。慣行農業なら、植え付け前にたっぷり農薬をかけたり、植え付け後に虫がきても殺虫剤をまけばよいが、そうもいかないのが有機農業のツライところ。
そのため、ネットで虫をよせつけないなど「育苗」が重要となります。過去に、育苗ハウスにおいてあった菊にいたアブラムシが原因で、圃場に植え付けた後のレタスに虫被害が拡大してしまい、1万株を、一株ずつ涙ながらに抜いて廃棄した苦いご経験があるそうです。それを教訓に、育苗は「専用ハウス」で行ってからは、被害はでていないそうです。

虫が入ってこないための1mmの網目のネット
虫が入ってこないための1mmの網目のネット
「病気・菌との戦い」

一方、野菜の病気は「輪作」を工夫することで防ぐなど、一つ一つの経験や実験の積み重ねが、有機農業の継続の鍵なのだなとお話を聞いて深く感じいりました。

マルチをかぶせ、太陽熱で、土の中の菌を殺菌
マルチをかぶせ、太陽熱で、土の中の菌を殺菌
「雑草との戦い」

また、今、大変なことといったら除草作業だそうです。「雑草」については、お話を聞くと「耕作放棄地」問題につながっていました。

「雑草は「種」なんです!雑草を放っておくと雑草の種を蒔いているのと同じなんです!」と富谷さん。なるほど!雑草を種と思ったことは人生初でした。

雑草は種!
雑草は種!

「認証をとった有機農産物というのは、大変な努力をしている、
ということが食べている人に伝わるといいなと思う。」

後継者を育てる

世間でも言われていることですが、やはり後継者問題は一番大きいと富谷さんもおっしゃっていました。後継者がいないため、耕作放棄地となった畑では、雑草が生えて荒れ放題となってしまいますが、その雑草の種が有機農業をしている畑に風でとんでくるため、除草作業が延々と続くということでした。
農業の担い手を育てるために、さんぶ野菜ネットワークさんでは、新規就農の受け入れをしています。ちょうど取材に伺った時には、研修を経て独立した方が「ハウスを建てる」と富谷さんへ報告されていたり、ハウスでは二人の研修生が作業をされていました。
研修生を経て、組合員になった方は28人いらっしゃるそうで、逆にリタイアされていく組合員のかたも同人数ほどいらっしゃっるので、確実に研修生は後継者となっていると感じました。ちなみに、研修生は、10人いれば10人が農業とは無縁だった方、半数は東京からやってくるそうです。

後継者を育てる

お一人は、他県でも有機農業の研修経験をつまれて、山武にきて2年目だそう。山武とのやり方の違いを富谷さんにお話し「へ〜!」っとなったりするそうです。有機農業を初めて、「カブを嫌いだったお子さんが、(研修で携わった)有機のカブを食べて、おいしいと言ってくれた」ことに感動されたという話をしてくださいました。もうお一人は、来年の3月から山武へ家族で移住してくることが決まっており、お仕事がお休みということで、1日研修にいらしていました。期待しています!

後継者を育てる

生産者とお客様を野菜でつなぐ

「外食のお店で、有機野菜を提供しているところは少ない。だから、提供できる場を継続していってほしい。もちろん農業自体も継続していって!!」

私たちのような、お客様に有機野菜を提供する側に対して期待することを伺うと、とてもシンプルな答えをいただきました。
「継続していくこと」
シンプルであるがゆえに、野菜をつくる人と、食べる人をつなぐことの大切さを感じる、とても重みを感じた言葉でした。

生産者紹介イメージ

富谷さんの土づくり場。土の中は発酵中で温かい。「堆肥は、植物性が9割で、発酵(分解)途中で窒素分が取られてしまうので、少しだけきゅうひ(家畜糞)を混ぜるのが、自分としてはいいと思っているんだ〜」「ワタミさんは100%植物性なんでしょ」と、ワタミファーム岡田農場長とマニアック(に聞こえる)な話題に・・・。